恋の宝石ずっと輝かせて2

「でもニシナ様が亀だったなんて考えもよりませんでした。僕、その亀を捨てにいったんですから、僕こそお詫びしなきゃ」

 仁はバツが悪そうに頭をかいていた。

「いや、ニシナさまはいい冒険だったと喜んでおられた。良子先生に面倒をみてもらえたことも嬉しかったみたいじゃ。また会いたいとか言い出して困ってるんじゃ。時々、連れて行ってもらえると助かるんじゃが」

 それを聞いて、ふたりは笑ってしまった。

「それはもちろん構いません。でもニシナ様ってお茶目なんですね」

 仁はこの山には沢山の幸せが詰まっているように思え、賑わっている祭りを見渡した。

「それから、あの、キイトのことなんですけど……」

 ユキがいいにくそうに尋ねる。

「……キイトはカジビだってことは山の人たちは皆知ってるんですか?」

「いいや、それを知っているのはわしらだけという事になった。カジビはキイトとしてキイトが果たせなかった使命をすることになったんじゃ。それはニシナ様も理解してのことじゃ。その方が、山の者たちも騒ぎ立てることもないじゃろうて。わしもこのことには賛成じゃ。これでより一層山の平和が守られることじゃろう」

 セキ爺は山を見つめ、それにつられてユキと仁も一緒に見ていた。

 この山のどこかで、赤石が一際赤く光っているようなイメージがユキの頭に浮かぶ。 

 セキ爺はこの後、花梨の元へ向かった。

 そこで話を始め、花梨にユキと仁の事を伝えているのだろう。

 ユキと仁がいる場所を知った花梨は手を振って挨拶をしてくれた。

 ふたりも気軽に手を振って返した後は、花梨はまた忙しく訪問客の相手をしていた。