恋の宝石ずっと輝かせて2


「仁、その赤石を渡してくれないか」

 仁は手に持っていた赤石をカジビに返した。

 カジビは赤石を優しく一撫ですると、もう一つ緑の石がぽんと生まれるように隣に現れた。

 それはエメラルドの原石のような少し角ばった石だった。

「ユキ、これは君の石だ」

 カジビから、その石を受け取り、ユキは掌でぎゅっと握り締め、泣くまいと涙を堪えていた。

「その石はまさか……」

 仁が言いかけると、ニシナ様が仁の肩に手を置いた。

「今はそっとしておいてやりなさい。お主には傷の手当てが必要じゃ。さあ、こっちにおいで。私が治してやろう」

 仁は何度と後ろを振り返りながらニシナ様についていく。

 その都度、視界に入ってくる必死に歯を食いしばって、震えているユキの姿。仁の胸からも悲しみがこみ上げる。

「仁、ここに腰掛けなさい」

 優しくニシナ様に言われ、倒れていた木の上に仁は座った。

 ユキの姿が前方に見え、仁は苦しさで喘いでしまう。

「今は辛かろう。だが、それでいいんじゃ。悲しみは決して悪いことばかりじゃない」

 ニシナ様の言葉の意味を仁は考える。

 そうしている内にニシナ様は仁の傷に触れ、優しく何度も撫でて癒していく。

 全然痛くないのに、仁の目からは涙がこぼれていった。