トイラは霧が立ち込めた視界が悪い空間を闇雲に走っていた。
時折「仁!」と叫んでいる。
暫くして、光が漏れるように霧が晴れてくると、黒い影が揺れ動いているのが見えてきた。
トイラがそれに近づくと、それは屍になったようにふらふらと歩いている仁だった。
トイラは尽かさず仁の肩を掴み、振り返らせた。
「仁、こんなところで何してるんだ。早く自分の体に戻れ」
「あっ、トイラこそ、ここで何してるんだ。君こそ僕の体に行け」
「何を言ってる、お前を犠牲にしてまでそんな事ができるか」
「だけど、ユキはトイラを愛している。僕には入り込める隙間などどこにもない。だったら、ユキの願うことをしてやりたい。僕の体が役に立つのなら本望さ」
仁はへらへらといかれた様に笑っている。
「仁! ユキはお前のことも大切なんだ。お前を失くしたくないと思っている」
「トイラの事の方がそれ以上の気持ちだと思うんだけど。それじゃユキに訊いてみたらいい。どちらの意識を引っ張り出すのがいいのか。それが一番いい方法だ」
トイラは絶句した。
ユキは一部始終を見ていたが、自分がこの状況を納得してみていられる訳がない。
「カジビ、助けて。ふたりを連れ戻せないの」
必死に懇願した。
「だめだ。体が一つしかない。どちらか一方しか助けられない」
その時、仁が辺りをキョロキョロとし出した。
「ユキ、どこかで君は見ているんだろう。さあ、早くトイラの意識を僕の体に」
仁はふわふわとしていて、薄笑いを顔に浮かべていた。
どんどん仁らしさが損なわれて消えていきそうだった。
トイラは覚悟した。
時折「仁!」と叫んでいる。
暫くして、光が漏れるように霧が晴れてくると、黒い影が揺れ動いているのが見えてきた。
トイラがそれに近づくと、それは屍になったようにふらふらと歩いている仁だった。
トイラは尽かさず仁の肩を掴み、振り返らせた。
「仁、こんなところで何してるんだ。早く自分の体に戻れ」
「あっ、トイラこそ、ここで何してるんだ。君こそ僕の体に行け」
「何を言ってる、お前を犠牲にしてまでそんな事ができるか」
「だけど、ユキはトイラを愛している。僕には入り込める隙間などどこにもない。だったら、ユキの願うことをしてやりたい。僕の体が役に立つのなら本望さ」
仁はへらへらといかれた様に笑っている。
「仁! ユキはお前のことも大切なんだ。お前を失くしたくないと思っている」
「トイラの事の方がそれ以上の気持ちだと思うんだけど。それじゃユキに訊いてみたらいい。どちらの意識を引っ張り出すのがいいのか。それが一番いい方法だ」
トイラは絶句した。
ユキは一部始終を見ていたが、自分がこの状況を納得してみていられる訳がない。
「カジビ、助けて。ふたりを連れ戻せないの」
必死に懇願した。
「だめだ。体が一つしかない。どちらか一方しか助けられない」
その時、仁が辺りをキョロキョロとし出した。
「ユキ、どこかで君は見ているんだろう。さあ、早くトイラの意識を僕の体に」
仁はふわふわとしていて、薄笑いを顔に浮かべていた。
どんどん仁らしさが損なわれて消えていきそうだった。
トイラは覚悟した。



