恋の宝石ずっと輝かせて2

 トイラは霧が立ち込めた視界が悪い空間を闇雲に走っていた。

 時折「仁!」と叫んでいる。

 暫くして、光が漏れるように霧が晴れてくると、黒い影が揺れ動いているのが見えてきた。

 トイラがそれに近づくと、それは屍になったようにふらふらと歩いている仁だった。

 トイラは尽かさず仁の肩を掴み、振り返らせた。

「仁、こんなところで何してるんだ。早く自分の体に戻れ」

「あっ、トイラこそ、ここで何してるんだ。君こそ僕の体に行け」

「何を言ってる、お前を犠牲にしてまでそんな事ができるか」

「だけど、ユキはトイラを愛している。僕には入り込める隙間などどこにもない。だったら、ユキの願うことをしてやりたい。僕の体が役に立つのなら本望さ」

 仁はへらへらといかれた様に笑っている。

「仁! ユキはお前のことも大切なんだ。お前を失くしたくないと思っている」

「トイラの事の方がそれ以上の気持ちだと思うんだけど。それじゃユキに訊いてみたらいい。どちらの意識を引っ張り出すのがいいのか。それが一番いい方法だ」

 トイラは絶句した。

 ユキは一部始終を見ていたが、自分がこの状況を納得してみていられる訳がない。

「カジビ、助けて。ふたりを連れ戻せないの」

 必死に懇願した。

「だめだ。体が一つしかない。どちらか一方しか助けられない」

 その時、仁が辺りをキョロキョロとし出した。

「ユキ、どこかで君は見ているんだろう。さあ、早くトイラの意識を僕の体に」

 仁はふわふわとしていて、薄笑いを顔に浮かべていた。

 どんどん仁らしさが損なわれて消えていきそうだった。

 トイラは覚悟した。