恋の宝石ずっと輝かせて2

 ──あら、新田さん。

「昨晩はどうも失礼しました。あの、その」

 ──あっ、もしかして瞳ですか? 申し訳ないんですが、瞳は今日友達と約束があって、出かけてしまったんです。

「いえ、ち、違うんです。どうか聞いて下さい。理由は後で話しますから、庭にある祠の中の赤石を今すぐ隠して下さい」

 花梨は息を飲んで、その後暫く黙り込んでしまった。

 微かに喉に詰まった喘ぎ声が聞こえ、受話器の向こうでかなり驚いている。

 ──新田さん、一体どういうことかわからないんですけど……

 花梨は知らぬふりをしてごまかそうとしていた。

「花梨さん、時間がないんです。よく聞いて下さい。驚かれるでしょうが、僕は山神様についてある程度のことを知っています。今、あの赤石を狙ってそちらに誰かが向かっているんです。突然こんな話を聞かされてびっくりでしょうが、今はとにかく赤石を安全な場所に隠して下さい。お願いします」

 仁は必死で訴えた。

 その迫力で花梨は戸惑い声を失っている。

 受話器から伝わるその静かな間が仁とユキにも居心地が悪く、息苦しくなっていく。

 ──……新田さん、今どちらからお掛けになってるんですか。ご自宅じゃないですよね。こちらのディスプレイには春日さんというお名前が出たんですけど。

「はい、友達の家から掛けてます」

 ──そうですか。少し詳しい話が聞きたいので、そちらに向かってもいいでしょうか。新田さんがおっしゃった赤石もお持ちして。

 さっきまで明るかった花梨の声が棘を含んだ響きを帯びた。

 仁はゴクリと唾を飲み込み、横で心配しているユキと目を合わせた。

 ユキは静かに頷く。