恋の宝石ずっと輝かせて2


「今のは一体……」

 訳が分からず、放心状態のユキは暫くその場で佇んでいた。

 静かな場所で場違いな音が流れてくる。
 だが聞きなれたメロディ。

 ユキが自分の携帯の着信音だと気がついたとき、我に返って携帯を手にした。

 それは仁からだった。 

 通話ボタンを押せば、ユキの返事も待たずに「ユキ!」と慌てて叫んだ声が聞こえてきた。

「どうしたの、仁」

 鼻声を帯びて洟がずるっと音を立てる。

「ユキ、なんか声が変だけど、もしかして泣いてるのか?」

「そんなことあるわけないでしょ。そ、そっちこそ慌てて様子が変だけど何かあったの?」

 見られているわけではないが、ユキは涙を指で必死に拭う。

「あのさ、矢鍋さんとさっき会ってさ、それが、カラスがユキの机の上に緑の葉っぱを運んできて」

「えっ? 一体何の話?」

「だから、今どこにいるんだよ。とにかくすぐ会おう」

 待ち合わせの場所だけ決め、電話を切るとユキは仁に会うために走った。

 何かが動き出している。

 そんな胸騒ぎがしていた。