恋の宝石ずっと輝かせて2

「何寝ぼけたこと言ってるんだ。いい加減にしろ!」

 トイラは腹が立つと同時に仁の胸倉を掴んで持ち上げ、勢い余って殴りつけてしまった。

 その拍子に仁はわき腹を下にして倒れこんだ。

 その時胸の中に入れていた瞳から貰った石が飛び出して、床を軽く滑っていく。

 仁はそれに気がつかず、トイラに刃向かうつもりですぐさま立ち上がった。

 口を一文字にきゅっと結んでいるユキの表情を見つめるが、この時はトイラの意識であると分かっていても、ユキが怒っているようにしか見えなかったために、怒りが水をかけたように静まっていった。

 冷静になると、トイラを説き伏せるかのように疑問をぶつけた。

「寝ぼけたことを言ってるのはトイラの方だろう。トイラは人間になりたくないのか?」

 今度は仁の方が哀れんだ眼差しでトイラを見つめる。
 いや、ユキの姿を通してトイラを見ようとしていた。

 仁の落ち着きを払った態度が、押し込んでいた気持ちにストレートに届き、トイラはそれに反応し苦しんでしまう。

「俺は、俺は……」

 トイラは「なりたくない」と嘘でも言ってしまいたかったのに、不意に自分の姿を映す目の前の窓をみてしまい、そのガラスに映し出されたユキを見つめて言葉につまってしまった。

 トイラもまた苦しくて仕方がない。

「トイラ、どうして素直に人間になりたいと思わないんだ? その方法が本当にあるじゃないか。今度こそユキと一緒になれるんだぞ」

「仁、キイトから直接その方法について聞いたそうだな。それは全てを聞いたということか?」

 仁は力強く頷いた。

「そっか、だったら分かるはずだ。俺が拒む理由が。俺はもうとっくにリスクを伴うことに気がついてるんだよ。仁はそのことについては何も感じないのか?」

 仁はぐっと息を噛み締めるように口を閉じた。そして静かに目を閉じ呼吸を整える。

 キイトから方法を全て聞いたが、ユキには肝心なある部分を隠して伝えただけだった。

 トイラがそのことに気がついている。仁はうろたえてしまう。

 再び目を開けたとき、力強い瞳を向けた。