恋の宝石ずっと輝かせて2

「ところで、あんた名前は?」

「僕は新田仁です」

「ふーん、ジンか。いい名前だな。もしかしてお嬢さんの彼氏か?」

「えっ、いえ、その、ち、違います!」

 婿にされそうになったことを思い出すとつい力んで否定してしまう。

 それを見てカネタは冷やかすような目つきで笑っていた。

「隠さなくてもいいって。あの家は結構金持ちだ。このあたりの地主みたいなもんだ。取り入ったら逆玉の輿だな」

「だ、だから、本当に違うんですってば。逆玉の輿とか全然興味ありません。それに僕、ちゃんと好きな人がいるんです」

「ふーん。まあ俺の知ったことじゃないから別にどうでもいいけど、でも八十鳩家は金や力を持ってるってのは事実だ。そのうちあんたも気が変わることもあるかもな」

「ですから、僕はそういうの一切興味ないんですって。僕はある女の子一筋ですから」

「へえ、よほどその女の子が好きなのか。最近のガキはませてるんだな。そしたらあっちの方もお盛んか?」

 仁は急に息が詰まって喘ぐように慌てた。

「あ、あの、その。そういう話はその……」

 その様子を見てカネタは退屈しのぎができたと大いに笑っていた。

 そして慌てる仁を放っておいて、また畑仕事に戻っていった。

 結局はからかわれていたにすぎなかった。青空を見上げ、仁は一息つくと、ゆっくりと腰を上げて立ち上がった。

「カネタさん、ほんとうに色々とすみませんでした」

 背中を向けているカネタに仁は少し大きな声で叫んだ。

 カネタが振り向くと仁は頭を下げる。

「気にすんな。気をつけて帰れよ。この辺りには人を化かす狸や狐が一杯いるからな」

 冗談のつもりということは分かったが、仁には実際そういうものと付き合ってるので笑うに笑えなかった。

 愛想笑い程度に口元を上げたが、ふいにまた頭痛がぶり返してきてしまい、少し顔が引き攣ったようになっていた。

 畦道を歩き、自転車を手にしてそしてその場を後にする。

 カネタは細い目を益々細くして仁のその様子をじっとみていた。