恋の宝石ずっと輝かせて2


 風が吹くたび木漏れ日が揺らいでいる。

 きらめく光と影の幻想の中、その男は鍬を宙に掲げたまま近寄ってきた。

 戦慄が走り、仁は恐怖で体が固まり身動きできない。

 ただ目を見開いてその男を凝視していた。

「ここで何をしている?」

 男が尋ねると、仁はごくりと唾を飲み込んで震えだす。

「ぼ、僕、何もしていません」

 極度の緊張が体を強張らせ、心拍数がどんどん上がっていく。
 ――殺されるのか。

「ここは八十鳩さんちの土地だぞ。勝手に入ったらだめじゃないか」

「えっ、瞳ちゃんちの土地?」

「なんだ、あそこのお嬢さんを知ってるのか?」

 知ってる名前が出てきたことで、男は少し警戒を緩め、持っていた鍬を下ろした。

 仁はそれでほっとした。

「ご、ごめんなさい。昔はこの辺子供の遊び場だったからつい勝手に入って」

「昔は大目に見られてたかもしれないが、最近はゴミを捨てに来る奴が居て困るんだ。お前もそこでゴミを捨てていただろう」

「いえ、ゴミじゃないんです。あの、その、亀を自然に戻しに来ただけで……」

「はっ? 亀? まさか外国産のカミツキガメじゃないだろうな。飼えなくなったから捨てにきたとか」

「いえ、それでもないです。極一般のこの辺りの土地に生息しているクサガメです」

 男は怖がっている仁の目を見つめその真偽をさぐる。

 直感も働き、嘘をついているようには見えず警戒心を解いた。

「とにかくだ、さっさとここから出て行くんだ」

「す、すみませんでした」

 仁が頭を下げたときだった、極度の緊張のせいか、また急に額が疼いて頭痛に襲われた。

 あっと、仁が思ったときには、ふらっとしてして倒れこんでしまった。

 目の前で倒れられ、男もまたびっくりしてしまう。

「おい、ちょっと、あんた、大丈夫か?」

 男はいきなりバタンと倒れこんだ仁に気が動転してしまい、鍬を放り投げて駆け込んだ。

「参ったな。ちょっと鍬で脅しすぎたか……」

 仕方がないと、仁を担いで森から出て行った。