恋の宝石ずっと輝かせて2

 山付近は畑が広がり、風が吹くと葉っぱがなびいて緑の海のようだ。

 適当に自転車を置いて、畦道のような場所を歩いて木が生い茂る山に入っていく。

「この辺りは、昔カブトムシとか取りに来たな」

 子供の頃の記憶を頼りに、亀を捨てられそうな沼地を探した。

「あった、あった。でもこの沼こんなに小さかったかな。昔はもっと大きく思えたけど」

 子供の頃に見た風景と比べてどこか変わったようでありながら、見覚えのある景色に仁は微笑んだ。

 袋から亀を丁寧に取り出し、じっくりとその姿を見つめた。

 亀も辺りを確かめるように顔をひょっこりとだし、仁と目があった。

「ここなら快適に過ごせるだろう。達者でね」

 仁はそっと亀を地面に置いた。

 亀は暫く手足を引っ込めていたが、また徐々に顔を出して辺りを確認するとゆっくりと歩き出した。

 一度立ち止まり首を少し斜めに向ける。振り返ったように見えたが、仁はそれをお礼と勝手に解釈してみた。

「お礼なんていいからね」

 浦島太郎の助けた亀に竜宮上へ連れて行かれる話を想像し、おかしく思えた。

 帰ろうと振り返ったとき、木漏れ日の間から人影が揺れる。

 ほんの数メートル先で、長靴を履き、首にタオルをひっかけた男が立ってじっと仁を見つめていた。

 誰も居ない森の中で人が立ってるだけで驚くに値するのに、その男はさらに鍬を振り上げて仁を威嚇してきた。