恋の宝石ずっと輝かせて2

 戻ってきた仁に良子はすぐさま反応した。

「仁、どこに行ってたの? 自転車は置いたままだし、家にも帰ってないし、さっき姉さんから電話あったわよ。ユキちゃんから連絡があったみたい。時間があるときに寄ってほしいとか言ってたって。あんた携帯くらい持ちなさいよ」

「朝、早起きしてぼーっとしてたから携帯忘れたんだよ」

 仁はユキから連絡があったと聞いて、早速体は出口に向かっていた。

「仁、ちょっと待って、あのさ頼みたい事があるんだけど。これをどこか山の奥に捨ててきて欲しいの。できたら水があるところ」

 仁が振り向くと、良子は奥から大きな石を持ってきた。

「石ぐらいその辺に捨てとけばいいじゃないか」

「普通の石ならね」

 良く見ればそれは頭と手足を引っ込めた亀だった。

「良子さん、それどうしたの?」

「昨日亀を診て欲しいって予約があったんだけど、その人こっそりと亀だけカウンターに置いて逃げちゃった」

「持ってきた奴の姿とか見てないの?」

「受付に置いてたベルが鳴って奥から出てきたら、もう誰もいなかったの」

「それでこの亀、病気なの?」

 仁はじろじろと亀を見る。

「ちょっと元気がなかったんだけど、餌をやって一晩経ったら問題なかった。どうみてもその辺にいるような草ガメだし、沼地に帰してあげたら大丈夫だと思うんだけど。拾った人は動かない亀を見て死にかけてると思って助けたかったんだろうね」

「それでも無責任じゃないか。勝手に自分で拾った動物を置いて逃げるなんて」

「でもね、前にも一回あったのよ。その時は子猫だったけど。運良く欲しい人がいたからよかったけど、亀は自然に帰しても大丈夫でしょ。一応診察しといたし」

「わかった。捨ててくればいいんだね。持ち運べるように袋かなんかない?」

 良子はスーパーのビニール袋に湿らすように水を少し入れ、その中に亀もいれた。

 仁はその袋を受け取った。

「こんなんで大丈夫かな」

「大丈夫大丈夫。ほんの少し我慢してもらうだけだから。それじゃ頼んだからね」

 良子にあっさりと言われ、仁は仕方なく袋を手にして自転車に乗り、沼地のある場所を求めて山の方へと向かった。