恋の宝石ずっと輝かせて2

「先輩、さあ食べて下さい。おじいちゃんの蕎麦は本当に美味しいんです」

 瞳とその祖父母達に見つめられ、仁は早く終わらせるつもりで箸を握って蕎麦を挟んだ。

 タレが入った器に入れ、ずずっと蕎麦をすする。

 周りは一瞬静かになって息を飲むように観察している。仁もまた咀嚼すると動きが止まった。

「ほんとだ、すごく美味しい」

 素直な感想だった。

 周りの三人もほっとすると同時に、またやかましく会話が飛び交う。

「さあ、これも食べて下さいな」

「こっちもどうぞ」

 瞳の祖父母が次々に仁の前に差し出した。

 仁は言われるままにそれらを食べていった。

 お腹が一杯になった頃、仁は礼儀として美味しかったと蕎麦の味を絶賛した。

 瞳の祖父は目を細めて喜びながら、蕎麦の作り方のポイントを仁に教える。

「新田さんもわしが教えればこんな風に作れますよ。是非一緒に作りましょう」

 すっかり蕎麦に興味を持ったと思われたみたいで、作り方を伝授させられそうになっていく。

「いえ、僕はそこまでは……」

「うちの家系では主が蕎麦を作れてやっと一人前と認められるんです。新田さんなら絶対上手く作られますって」

 祖父の言葉が耳に違和感をもたらし、仁は「ん?」となっていた。

「しかし、瞳もいい彼氏ができたのぉ。爺ちゃん嬉しい。なあ、婆さんや」

「さっきは先走ってしまいましたけど、まだ高校生同士ですから、それからですわね」

 ふたりの会話に仁は思いっきり青ざめた。やっぱり勘違いしている。

「お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、ちょっとやめてよ」

 瞳が軽くあしらいながら喜んでいる。

 このままでは本当に彼氏にされてしまいそうで、仁は危機感を覚え立ち上がった。

「あの、ちょっと待って下さい。何か誤解が……」

 その時、急に立ちくらみがして、意識が遠のき仁はその場で倒れこんでしまった。