トイラとキースは犬や猫を操り、ユキを守るためにジークと戦った。その時に楓太も参加し、そして自分もそこに居たところを見られていた。
それなら今更隠す必要もないはずである。
「そっか、なんか世間は狭いね」
犬相手にそんなことを言っても仕方がない。
仁はなんだかおかしくなって笑っていた。
楓太は仁をじっと見ていた。
「狭いと言えば、狭いのかもな。だがそれが必ずしもいい意味ではないのが残念だ」
「えっ?」
意味深な楓太の言葉を耳にして、仁の笑いは消えた。
楓太は笑うことの知らぬ犬の顔で仁から視線を外し、焦点も合わせずに前を見据える。
「楓太、なんか都合の悪いことでもあるのか?」
楓太はそれ以上何も言わず、檻にもたれかかるように体を横たわらせた。
肝心なことを聞きたい時に限って話が続かないことに、仁は消化不良を起こしてヤキモキする。
そこに良子が現れたことによって、新たな用事を頼まれ、仁はそれ以上深く追求することを止めた。



