恋の宝石ずっと輝かせて2

 日がすっかり落ちてもまだ気温が下がりきらない蒸し暑さの中、仁は自転車を飛ばして家路に着いた。

 受験勉強しなければならないのに、騒ぎが大きすぎて落ち着く事ができない。

 いざとなれば浪人することも覚悟して、開き直ってしまう。

「とにかく今目の前にある問題を解決しなければ」

 そうは思いながらも、仁はこの日の出来事を振り返る。

 できるだけ平常心を装っていたが、本当は心乱れて苦しくなっていた。

 トイラの意識が目に見えたとき、ユキがまだトイラを深く思い続けている気持ちに打ちのめされ、結局、自分は蚊帳の外にいた気分になってしまった。

 自分がそんな惨めな気持ちにならないためにも、仁は進んでユキのために協力しようという気持ちを強く抱いた。

 だから藁をも掴む状態で楓太からの情報を手に入れたかった。

 中々思うように事が進まなかったが、『瞳のこと本当に何も知らないでいいのか?』と最後に楓太が言った言葉が耳についてはなれない。

 その晩、仁は風呂に浸かりながらゆっくりと暫く考えてみた。

「楓太は僕と瞳ちゃんをくっつけたいがために、瞳ちゃんのいいところを見るべきだと言っているんだろうか」

 だが段々と違うように思えてきた。

「もしかしたら楓太は何かを間接的に伝えようとしてるのかな」

 楓太が話せない立場なら、その飼い主である瞳が何か気がついたことがあるかもしれない。

 そう思うと、仁は次の日、瞳に会ってみようと決意した。
 
 リラックスすべきお湯の中で体に力が入ってしまっていた。