恋の宝石ずっと輝かせて2

「あの……春日先輩?」

 名前を呼ばれて振り向けば後方にあの女の子が首を傾げて立っていた。

「えっ? いつの間にそんなところにいたの?」

「春日先輩、いきなり私を無視して山に登っていったんじゃないですか。こっちがびっくりしました」

 その子に呆れられ、ユキは恥ずかしくなった。

 それを誤魔化すように、姿勢を正して話しかける。

「とにかく、一体私に何の用? それにあなた誰なの?」

 ユキの言葉で女の子に緊張が走った。

「私は一年生の八十鳩瞳(やそばとひとみ)と申します。はっきりいいます。春日先輩は新田先輩とどういうご関係なんですか?」

「えっ? 私と仁のこと?」

 ユキはまだ状況がつかめなかった。

「そうです。私、新田先輩が好きなんです。ずっとその気持ちを伝えているのに、新田先輩は全然相手にしてくれてなくて、これでも私、顔は悪くないと思うんです。年下だし甘え上手なところもあって、絶対新田先輩に気に入られるはずなんです。それなのに、新田先輩はいつも春日先輩とばかり一緒に居るし、それでも二人は付き合ってないって噂を聞くし、一体どっちなんですか。はっきりして下さい」

 瞳と名乗ったその女の子はその名前に代表されるように、こぼれるような大きな瞳を潤わせていた。

 下級生でありながら、堂々と自信に溢れている。

 ユキよりもしっかりとして、物事をはっきりしようとしている。

 強く睨んでいるが、それは必死で踏ん張ろうとして自分を奮い起こしている姿だった。

 ユキはそれに負けそうだ。

 マリに言われた事が、この時目の前で起こってしまった。自分がはっきりしない態度なために周りに迷惑かけている。

 それでもユキは何をどういう風に言っていいのかわからない。

 圧倒されて言葉に詰まっていると、その態度が瞳を逆なでする。