足取りの重くなったあたしを上川が不思議そうに見る。
「どーしたん?木下」
「何でもない...あぁ、でも、待って」
あたしが立ち止まったことに気づいて、振り返る上川は少しだけ前にいた。
「...気分悪いん?」
ううん。そうじゃない。
「あのさ、上川。あんたさ、何であたしに話しかけんの?」
「...なんとなく?」
「もう、やめてくんない?」
「...なんで?」
「あたしとは話さない方がいいよ」
莉奈から聞いてるでしょ、そう言えば 上川は眉をしかめた。
何のことか分かっていなさそうだ。
少し意外だったけど、まぁいい。
もうこれ以上の心配は要らないはずだ。
良かった、と思って上川を通り過ぎようとした。
ーーのだけれど、
「気をつけるわ!」
そう言って またあたしと一緒に教室へ向かう彼。
...何でこいつ横歩いてんの?
もう余計疲れた。
これ以上何かを言うのもしんどくて、教室まで、徹底的に無視した。
教室に入る時は少し身構えたけど、あたしと上川は後ろの席だったから注目されるようなこともなく、莉奈も前を向いて友達と話していたから大丈夫だった。
その日の夜、あたしは誓った。
上川とは極力関わらないようにしよう。
なのに。
そんな決意とは裏腹に、すぐ機会はやってくる。
