じゃあまた放課後、と2人と別れて教室へ向かう。
「あ!木下!どこでご飯食べとったん?」
...上川だ。
後ろから聞こえた声を無視して歩く。
関西弁だから分かりやすいってのもあるけど、上川の声は少し特徴的だ。
少し掠れていて、程よい低さ。
後ろからでもすぐ分かる。
「なぁ木下って!無視せんといて」
小走りであたしに追い付いてきた上川は、全然傷ついてない顔で 傷ついたわーと睨んでくる。
そのまま渡り廊下に差し掛かった時、ぱっと踵を返した。
もちろん上川もついてきた。
「ちょ、木下 待ってよ。どしたん?」
「...別に」
向こうの廊下で莉奈が友達と話をしていたからだ。
避けるのも気が引けるけど、見られたくないものは見られたくない。
勝手についてくるこいつのせいで、ちょっかいかけられても迷惑だ。
回り道だと分かっていたけれど、階段を降りて下の廊下から行くために階段を降りかけた時だった。
2人の女子生徒とすれ違った。
やばい。
咄嗟に顔を伏せたけど 横にいる上川は分かっていないだろうし、何より、向こうが見落とすはずがない。
足早にすれ違ったあと、聞こえた2人の話声に耳を塞いでしまいたくなった。
あぁもう、最悪。
「今の、木下だよね?なんで上川くんと...?」
「分かんない。とりあえず莉奈に言う?」
あの2人は莉奈と仲がいい。
不本意とはいえ、上川といる所を見られた。
気にし過ぎかもしれないけど、こういう時の勘って、当たるもんでしょ?
気が遠くなりそうだった。
