太陽に溶かされて



...つくづく、上川は掴めない男だと思う。


古典の授業中に、ふとシャーペンを動かす手を止めて窓を見た。


教卓を正面に見て、左から2列目の1番最後の席があたしの席。

左隣は机が元々ないし、右隣は不登校の子でずっと空いている。

前の席が中須さんであることを除けば、いい席だと思う。

そりゃ自分をいじめから助けた人を裏切ったわけだしね。


そして 気まずさを感じるのは彼女も同じらしく、プリントを回す時はあからさまに態度に出る。


いちいち気にされる方が気になるっつーの。


ふと視線を右にやれば、右から2列目の1番最後の席に座る上川が 居眠りしている。

コクン、コクンと首が動き、きっとノートは手に握ったシャーペンのせいでミミズが這っているはずだ。





一緒に帰ったあの日から、上川は度々あたしに話しかけてくる。


挨拶に始まり、課題をやったかだとか、雨で体育が無くなってしまっただとか、本当にどうでもいいことばかり。


あしらうあたしに不快感を抱かないのだろうか。

それとも神経が図太いの?



何より困るのは、話しているところを莉奈に見られることだ。

きっと彼女は気を良くしない。


莉奈が上川を気に入っているのは一目瞭然。

男女を交えてはいるが よく一緒に居るし、度々遊びにも誘っている。


好きとかそういうのは分からないけど、あたしに話しかけることを好まないのは明らかだ。




また何かされ出したらたまったもんじゃない。