...なにこの状況。
本当にこの人は何がしたいか分からない。
進んで嫌われ者と話そうとする人なんかいるんだろうか。
いや、いないはず。
あたしが悶々と考えている間にも,彼の口は止まらない。
あたかも普通の友達のように接してくる上川に対して、あたしが抱くのは、不信感。
「なぁなぁ、木下ってさ~」
...ペースが乱される。
「え、聞いとん?」
...‘普通に’なんてしてほしくない。
「なぁ木下...」
「うるさい」
こんなの、この人のちっぽけな気まぐれに違いない。
孤立するあたしが珍しかった、ただの好奇心。
馬鹿らしいけど、誰とも話さないことであたしは自分を守ってきた。
それをこんなに簡単に壊されたくない。
こんな気まぐれの優しさは貰わない方がいい。
むしろ、吐き気がする。
「ごめんって!」
「...いいよ 別に。もう帰ろう」
「そやなー、暗なったらあかんしな」
「そうだね」
そして、上川の話に適当に相槌を打って、帰路についた。
家に帰って、ご飯を食べて、お風呂に入っても、
体はだるくて、頭は重くて、
きっと全部 あの時のせいだ。
思い出す。
消えない。
莉奈から受けた仕打ちも、上川のあの無邪気な顔も。
いろんな意味であたしを苦しめていく。
ずっと夜が明けなければいいのに。
