事の発端は今日。
放課後の掃除の時間のことだ。
今週の当番のグループに噂の転校生、上川翔太とあたし、木下柚奈が入っていた。
彼が転校してきてから、もう2週間がたっていた。
相変わらず彼は人気者で、毎日明るく笑っている。
一方、あたしと彼はまだ話したことがない。
そりゃそうだ。
好かれる彼と、嫌われた私。
クラス替えまで話す機会なんてないんだろうな、そう思っていた。
それなのに。
掃除が終わり、帰る準備をしている時に彼は話しかけてきた。
「なぁ。俺らって、まだあんまし喋ってへんやんなー?」
急でびっくりしたけど、会釈だけして その場を去り、教室を出た。
他にたくさん話す人がいるはずなのに。
そんなに珍しいわけ?
ひとりぼっちのクラスメイトが。
「あれ、無視すんなよー!」
「あの子は気にしない方がいいよ、翔太くん。1人がいいタイプの子だから」
「...へぇ~」
「それより、今日歓迎会しよ?」
何も返さなかったあたしの背中に もう一度声をかける彼と、宥める莉奈。
莉奈の言葉に 少し納得したような彼。
なんだかその声に耐えられなくて、早く声が届かない場所へ、あたしは歩くスピードを上げた。
