桜並木に囲まれて続くガラス張りの渡り廊下。
奥に見える体育館へ向かって走っていた。
ドンッ!
「冷たっ!!」
誰かちぶつかった感覚と同時に、何故か冷たいものが全身にかかった。
「すみません!大丈夫ですか?」
驚いて尻餅をついたままでいると、上から心配そうな女性の声がした。
「はっ・・・はい!大丈夫です!」
咄嗟にそう答えながらのろりと立ち上がった。
春になったとはいえ、4月の朝に水を被るのはさすがに寒い。
濡れた服を絞るようにしてつかんでいると、
「あっ!ごめんなさい!制服も濡らしちゃいましたね!あの、これ使って下さい!」
すっと目の前に薄いピンク色のハンカチが差し出された。
「いえ!僕が走ってたのが悪いので・・・・すみません・・・・」
謝りながらも差し出されたハンカチを受け取った。
そして、目の前にいる彼女の姿を見た。
この時・・・・・
今までにはない感覚・・・・・・
一瞬にして時が止まるような感覚に陥った。
うつむいていた顔を上げ、同じ目線で見たその彼女は・・・・
驚くほどに可愛いらしいかった。
いや、『可愛い』だけでない。
『可憐だ』『優美だ』『美しい』
彼女を形容する綺麗な言葉はいくつもあった。
恐る恐るといったかんじで俺を見る黒目がちな大きな目は、長い睫毛に縁取られていた。
ほんのりとピンクのほっぺたが、白くて透明感のある肌の上にのっていた。
すっと筋の通った鼻の下には、ふっくらと赤く小さな唇。
廊下の窓から入ってくる春風に揺れるふわふわした黒くツヤのある長い髪は、高い位置に2つに結ばれていた。
そして・・・
そして、どうしても・・・
すらりと細長い手足がのびる、小柄な体つきとは不釣り合いな・・・
豊かな胸にどうしても目がいってしまう・・・
「あのー・・・大丈夫ですか?」
つい彼女に見入ってしまっていた。
そんな俺を不思議そうに見て可愛らしいアニメのキャラクターのような声で彼女は再び尋ねた。
「はいっ!大丈夫です!あの、ハンカチありがとうございます!洗って返しますので・・・その、クラスは・・・」
キーンコーン
クラスを尋ねようとした俺の変に早口な声は、この学園の独特なチャイムによってかき消された。
ヤバい!
そういえば、先生にチャイムが鳴るまでには体育館に来るように言われてたんだ!
「あのっ!ごめんなさい!今ちょっと急ぐので、後で必ず返しますから!」
それだけ言って、俺は彼女を残して体育館に向かって走った。
彼女は後ろから何か言っていたが、同時に体育館の入り口にいた先生に大声で急かされたので、何を言っていたかは聞き取れなかった。
・・・それにしても・・・
俺は彼女と別れ挨拶の練習をしている間も、ずっと彼女のことが頭から離れなかった。
本当に今まで感じたことのない気持ちが、胸をずっと支配している。
締め付けられたり、弾んだり、少しモヤっとしたり・・・
彼女は一体どこから来たのだろう・・・
名前は何ていうのだろう・・・
そういえばどうして大きなバケツを両手に一つずつ持っていたのだろう・・・
気になって仕方なかった。
ピンクのハンカチ・・・
彼女を表すような、ふんわりと優しげでほのかに甘く香る・・・
きっと彼女も新入生だろう。
クラスが同じだといいな・・・
ふと、心の中でそう思う自分がいた。
わからない。
この気持ちが何なのか・・・
とにかく彼女ともう一度会って確かめたかった。
奥に見える体育館へ向かって走っていた。
ドンッ!
「冷たっ!!」
誰かちぶつかった感覚と同時に、何故か冷たいものが全身にかかった。
「すみません!大丈夫ですか?」
驚いて尻餅をついたままでいると、上から心配そうな女性の声がした。
「はっ・・・はい!大丈夫です!」
咄嗟にそう答えながらのろりと立ち上がった。
春になったとはいえ、4月の朝に水を被るのはさすがに寒い。
濡れた服を絞るようにしてつかんでいると、
「あっ!ごめんなさい!制服も濡らしちゃいましたね!あの、これ使って下さい!」
すっと目の前に薄いピンク色のハンカチが差し出された。
「いえ!僕が走ってたのが悪いので・・・・すみません・・・・」
謝りながらも差し出されたハンカチを受け取った。
そして、目の前にいる彼女の姿を見た。
この時・・・・・
今までにはない感覚・・・・・・
一瞬にして時が止まるような感覚に陥った。
うつむいていた顔を上げ、同じ目線で見たその彼女は・・・・
驚くほどに可愛いらしいかった。
いや、『可愛い』だけでない。
『可憐だ』『優美だ』『美しい』
彼女を形容する綺麗な言葉はいくつもあった。
恐る恐るといったかんじで俺を見る黒目がちな大きな目は、長い睫毛に縁取られていた。
ほんのりとピンクのほっぺたが、白くて透明感のある肌の上にのっていた。
すっと筋の通った鼻の下には、ふっくらと赤く小さな唇。
廊下の窓から入ってくる春風に揺れるふわふわした黒くツヤのある長い髪は、高い位置に2つに結ばれていた。
そして・・・
そして、どうしても・・・
すらりと細長い手足がのびる、小柄な体つきとは不釣り合いな・・・
豊かな胸にどうしても目がいってしまう・・・
「あのー・・・大丈夫ですか?」
つい彼女に見入ってしまっていた。
そんな俺を不思議そうに見て可愛らしいアニメのキャラクターのような声で彼女は再び尋ねた。
「はいっ!大丈夫です!あの、ハンカチありがとうございます!洗って返しますので・・・その、クラスは・・・」
キーンコーン
クラスを尋ねようとした俺の変に早口な声は、この学園の独特なチャイムによってかき消された。
ヤバい!
そういえば、先生にチャイムが鳴るまでには体育館に来るように言われてたんだ!
「あのっ!ごめんなさい!今ちょっと急ぐので、後で必ず返しますから!」
それだけ言って、俺は彼女を残して体育館に向かって走った。
彼女は後ろから何か言っていたが、同時に体育館の入り口にいた先生に大声で急かされたので、何を言っていたかは聞き取れなかった。
・・・それにしても・・・
俺は彼女と別れ挨拶の練習をしている間も、ずっと彼女のことが頭から離れなかった。
本当に今まで感じたことのない気持ちが、胸をずっと支配している。
締め付けられたり、弾んだり、少しモヤっとしたり・・・
彼女は一体どこから来たのだろう・・・
名前は何ていうのだろう・・・
そういえばどうして大きなバケツを両手に一つずつ持っていたのだろう・・・
気になって仕方なかった。
ピンクのハンカチ・・・
彼女を表すような、ふんわりと優しげでほのかに甘く香る・・・
きっと彼女も新入生だろう。
クラスが同じだといいな・・・
ふと、心の中でそう思う自分がいた。
わからない。
この気持ちが何なのか・・・
とにかく彼女ともう一度会って確かめたかった。