やがてホームルームが始まると、教室の扉を開けて出席簿が入った透明なケースを抱えながら先生が入ってくる。
途端に女子は色めき立ち、「今日も幸せ〜♡」などと目を輝かせた。
無理もない。
私のクラスの担任は、神楽先生なのだから。
クラス替えの後、担任を発表されたときの嬉しさは今でも鮮明に覚えている。
体育館中に混合した歓喜と悲哀。
それに混じって、一人で笑みが溢れるのを抑えるのは、必死だった。
「おはよう。出席取るぞー、青石」
「はーい」
「赤羽〜」
「はいっ」
順に呼ばれる名前に、それぞれ真面目に応答していく。
神楽先生の口から名前を呼ばれるのは、例え出欠確認であっても嬉しいこと。
そしてそんな神楽先生のクラスで、欠席者は一度も出たことがなかった。
なのに。
「──欠席は佐伯か」
今まで無遅刻無欠席、定期テストでも全教科学年1位、自慢の学級委員である佐伯さんがなぜか学校に来ていなかった。
「佐伯さんが欠席なんて珍しくない?」
「ほんと。今まで皆勤賞なのにね」
「先生〜、佐伯さんなんで休んでるんですかー?」
「俺も分からないんだよな。後で家に連絡してみっか」
あの佐伯さんが、無断欠席…?
嫌な違和感を覚えて、思わず身震いした。

