やがて学校の校門が見え、気付けば周囲には大勢の生徒。
その光景を見て、"何も変わってない。日常だ"と安堵する。

すると校門の方から小さな笑い声が聞こえた。


ふと前を見ると、門には数人の先生。
体育の藤塚先生に、社会の名元先生、その横に生徒と談笑する一際目立ったキラキラした先生がいた。



(神楽先生…)



国語の神楽亮介先生。
24歳独身、彼女なし。
そのルックスから女子はもちろん、話しやすさやノリの良さで男子からも慕われていて、神楽先生の受け持つクラスの国語の成績が良いことから、他の教師陣からの信頼も厚い。

眼鏡の奥で、笑ったときに細くなる大きな目。
それを縁取る長く黒いまつげ。
綺麗な二重瞼。
筋の通った鼻筋。
ふっくらした唇。
日焼けを知らない色白の肌。


誰もが一度は振り返る…ほどではないけれど、
そのルックスは学校の中で間違いなくトップに君臨していた。

かつ性格も良く教え方もうまい。


先生の受け持つクラスはもちろん、他クラス他学年の女子からも、やたらとモテていた。


そして私もまた、そんな神楽先生に淡い恋心を持つ乙女の一人。


とは言っても私の場合遠くから眺めて、生徒と話して笑う先生の姿だけで満足できていた。
先生と生徒の恋なんて、叶うわけ無いってわかってるから。



「おはようございます」
「おはよう」



一斉に門を通っていく生徒にまぎれて、神楽先生に挨拶する。
神楽先生も、そんな流れていく生徒の群に対して、挨拶を返した。