その翌日は、前日のどしゃ降りが嘘のような快晴。
昨日は巣に隠れていた鳥たちも朝から元気に飛び回り、子供たちの走り回る元気さに羨ましさを抱きながら、

私もまた、学校へと向かっていた。


「よー、ザクロさんからの手紙はどーなった?」



聞き覚えのある声に脳が反応し、瞬時にその人物をサーチする。

そして、手紙のことを知っているのは1人だけで



「…おはよう、ヨッシー」



朝から私をからかうようにニヤニヤしながらポケットに手を突っ込んで隣に立つヨッシー。
そんなヨッシーの質問をスルーして再び1歩進むと、
「おいスルーすんなよ!」と後ろから腕を掴まれた。



「ちょ、なにしてんの」



振りほどこうにも、高校生にもなったヨッシーの骨ばった手はもはや瞬間接着剤で張り付けられたようにピタリと私の腕を捉えて離さない。


こういう時、ヨッシーも男なんだと実感する。

小さい頃は、私の方が背も高くて頭も良くて、ヨッシーは泣き虫でチビでよく同級生からからかわれていた。
そんなヨッシーを守っていたのは、いつだって私だった。

ヨッシーの前に立って、男の子たちに喝を入れていたのは、誰でもない私だった。



「…昨日はほんとに怖かったの!」
「ザクロさん?」
「殺されるって本気で思ったんだから…」



はぁ、とため息を漏らすと、それをすくうようにヨッシーが低い声で言葉を発した。



「俺が守ってやるよ」
「……はあ?」
「俺が。あゆはを守る」



──こいつまたからかいやがって…


ヨッシーの顔を見ると、彼はとても真剣な顔で、真っ直ぐに私を見ていた。
刹那、掴まれたままの腕がじんわりと熱くなっていくのを感じて、3秒彼の瞳から逃げられなかった。

恥ずかしさを覚えた私はすぐに視線をそらし、


「な、何言ってんの。泣き虫ヨッシーだったあんたが」
「俺はもう昔のヨッシーじゃないから。」
「てか、何真に受けてんの?冗談って言ったのはヨッシーでしょ」
「そうだけど。ホントに何かあったら、俺が必ず守るから!」
「はいはい。どーもどーも。早く行くよ」



幼い頃にはなかった男らしさに、少し戸惑う。
真っ白な雲が私達を横切って、不穏な存在の手紙を私の脳内から一瞬で連れ去った。