「ふうん。赤羽ってほんと、お人好しなんだね」
「え?」
「いや、言わないだろうなあとは思ってたよ?
でもこれはある意味賭けだった。さすがに自分が殺される、しかもその犯人が目の前にいるとなればさすがに逃げ出すか誰か助けを求めるだろうとも思った。」
淡々と話す神楽先生は、どこか嬉しそうに見えた。
「私は…先生が何か訳があるんじゃないかなって」
「だからそれは」
「卒業式!…ですよね。話してくれるんですよね」
「あぁ。本当に聞きたいならね」
「1つ聞いてもいいですか?」
「なに?」
佐伯さんが殺されたと聞いたとき、あの瞬間はその事実にあまりに驚きすぎて忘れていた。
でもたしかザクロは……
「ザクロ…先生は手紙にこう書きましたよね、次は1年後だって。本業が忙しくなるからしばらくあくって。
なのになんで佐伯さんが?」
「ほう。頭が冴えるんだね。でも惜しい。
あの手紙は予告の手紙だよ?」
「…はい」
「頭を使おうか赤羽さん。予告で次の犯行は1年後だよ?つまり、君に手紙が届くより以前に予告が誰かにされていたとしたら、それはその一年の中にはカウントされない。それが俺の中でのルールだ」
理不尽すぎる。
素直にそう思った。
つまりなんて言われても、納得できない。
自分の中で決めたルールなんて、あまりにも理不尽極まりない。
「…ふふっ」
それでも、ドヤ顔でそれを堂々と宣言する神楽先生が可笑しくて、さっきまでは佐伯さんが殺されたことや神楽先生が殺人鬼だと知って煩くなっていた心臓も、いつの間にか落ち着いて笑いがこみ上げた。

