「お待たせ。赤羽と松原以外は親に連絡がついて、迎えに来てくださるそうだから、2人以外は荷物持って体育館に行きなさい」
先生の誘導で、保健室にいる松原さんと私以外のクラスメイトが少しずつ教室を出ていく。
「あゆ──」
「風村、早く行きなさい」
神楽先生に促されるヨッシーの方を見ないまま、私は一人で教室に取り残された。
しかしその数秒後、
「赤羽」
「…神楽先生…」
「俺も教室に残るから、安心していいよ」
神楽先生の低い声が、何となく心地よくて安心する。
私の座る前の席に腰を下ろした神楽先生は、椅子を180度回転させて私の正面に向いた。
「…?」
「佐伯が殺されて、どう思った?」
「え…?」
「怖くなった?」
先生の質問に、ただ首を縦に振るしかできない。
神楽先生、なんで今そんなこと聞くんだろう。
「自分も殺されるかもしれない、って?」
その問いに、思わず体がビクッと反応する。
背中に冷や汗が伝わり、爪が食い込むほど拳を握りしめた。
そんな私の様子を察してか、神楽先生は私にこう言った。
「俺に何か相談事ある?」
神楽先生に話そう。手紙のこと。
クラスメイトが殺された今、あの手紙の信憑性は急激に高くなった。
先生なら、何か策を考えてくれるかもしれない。
「手紙が…私の所にも届いたんです…」
「…うん」
「ザクロから…卒業式に私を殺すって…」
途端に体が震え出し、うまく話せなくなる。
ポロポロと涙が溢れ、自分でも感情のコントロールが出来なくなっていた。
「大丈夫だよ赤羽」
「うっ…うぅっ…」
「安心しなさい」
神楽先生は私の頭にポンっと手をおいて、
衝撃の言葉を口にした。
「卒業までは殺さないから」

