先生は殺人鬼。


結局学校は臨時休校となり、先生たちは現実を受けとめきれないまま親への連絡に追われた。

教室に取り残された私達もまた、先生から話された事実を理解できず、全員がもう埋まることのない佐伯さんの席を呆然と見ていた。

松原さんは先生が保健室につれていき、教室はそれまでの喧騒が嘘のように静まり返っている。


「…なあ…あゆは…」
「なに…?」
「…ちょっと、いいか?」


ヨッシーに連れられ、私は廊下に出される。
人のいない廊下は、冷たい空気が張り詰めていて居心地が悪かった。


「朝の…俺が言いかけたこと…」
「…今そんな話してる場合じゃないよ」
「神楽先生の目が変だった」
「…え?」
「なんか…なんかわかんねぇけど…いつもの優しい神楽先生の目じゃなかったんだよ…。
俺、目合ったんだけど、寒気すらした。冷たかった。」


斜め下を見たまま、ヨッシーはそう話した。
神楽先生の目が冷たかった?


「だから…何?」
「俺……なんか…嫌な予感がして。そしたら、佐伯が殺されただろ…」
「神楽先生が事件に関係してるって言いたいわけ?」
「……」
「バカなこと言わないでよ!」


叫んだ私の声はすぐさま廊下に響き渡り、真っ青な顔の生徒たちが教室から顔を覗かせた。

そんなことお構い無く、私はヨッシーに怒りをぶつける。


「根拠もないのに!神楽先生がそんなわけないじゃん!」
「けど…!」
「ヨッシー変だよ!今まで誰かのこと悪く言ったことなんて無かったのに」


ヨッシーはいつだって優しかった。
泣き虫だったけど、心は誰よりも綺麗で、純粋で。

そんなヨッシーが神楽先生に疑いを向けたことに、怒りと悲しみが湧いてくる。

こんな非現実な状態で、思考が狂うのは分からなくもない。
それでも、よりによって神楽先生にその矛先を向けるなんて。


「…もういいよ。勝手にそう思っとけば」
「あゆは…」