『そうなの。それで、お父さんに相談したら、たまには杏奈を誘ってみたらって言われて。お父さん今、お仕事忙しいのよ。だから、杏奈さえ都合が合えば、母娘旅行しないかなと思って』

「うん。行きたい!」

この二日間と、翌日の定休日を含めた三連休は、家から離れておこうと思っていた杏奈にとって、母からの誘いは渡りに船だ。

母とふたり、どこかでリフレッシュでもすれば、気持ちの切り替えもスムーズにできるかもしれない。

「そうと決まればお母さん、行先考えないと。せっかくだから私、外国とか行きたいなあ」

『あら、ずいぶん乗り気ね。じゃあ、今から待ち合わせてランチしましょう。その足で旅行代理店に行くっていうのはどう?』

杏奈をからかってはいるが、母のテンションだって上がっている。

ひとりで家で寂しく昼食を摂る予定が、一気に楽しいランチタイムに変わる。

「オッケー。じゃあ、待ち合わせどこにしよう?」

寂しい気持ちに蓋をするように、杏奈は元気な声を上げ、母とランチの約束を取り付けたのだった。