「どんなに傷ついても。

どんなにつらくても。

何事もなかったように笑って、みんなの話を聞くのが私?

そうじゃない私は、受け入れてもらえないの?」


みんなを心配したり、世話を焼いたりする頼りになるお姉ちゃん。


みんなが私に望むのは、そういう私であって。


怒ったり、悲しんで泣いたりする私は必要ないの?


「傷つくって……。

菜穂は、何に傷ついてるんだ……?

俺と梨華のこと……?」


聞かれても、私は何も答えはしなかった。


「どうして……?

菜穂はずっと、俺を励ましてくれてただろう?

やっと梨華に手が届いたのに、なんで祝福してくれないんだ?

俺が心配だから?

それは、さっきも言った通り、俺は待てるから。

今までさんざん待ったんだし、それくらい平気。

だから、俺と店に戻ろう」


違う。


違うよ、秀哉。


「無理。それは出来ない」


「……なんで?」


苦しそうに、私の腕を掴む手に力を込める秀哉。


その掴まれた腕が、ヒリヒリと痛い。


「そんなに知りたい?


だったら、教えてあげようか?」


まさか、こんな形で秀哉に伝えることになるとは思わなかった。


今まで生きてきて。


一番悲しいこんな日に……。


「私……、秀哉が好きなの……」


「え……?」


「初めて出会った時から。


今までずっと……。


秀哉のことが好きだった……」