私たちの六年目

「ねぇ、菜穂。

秀哉のことが心配なのは、わかるけどさ。

二人はきっと大丈夫よ。

友達から結婚に発展したカップルは、うまくいくって聞くしね」


「あー、それ。

オレも聞いたことがある。

大恋愛で盲目的に結婚するより、冷静に相手のことをよくわかってるから長続きするってな」


「だから、菜穂。

もう梨華を責めるのはやめてあげて。

ただでさえダメージ食らってるんだし、これ以上追い討ちはかけないでやって。

お腹の子に障るわ」


郁未の言葉は、チクンと私の胸を刺した。


やっぱりそうだ。


悪いことをしていたのは、梨華なのに。


私の方が理解がなくて、心の狭いひどい人間みたい。


私が今、どんな思いでいるか。


みんなとは長い付き合いなのに、誰一人わかってくれる人がいないなんて……。


「私、帰る……」


そう言ってスッと立ち上がると、みんなに一斉に「なんで?」と聞かれた。


「菜穂……?」


心配そうに、私の顔を覗き込む秀哉。


そんな秀哉を見ていたら、胸が張り裂けそうだった。


「ごめん。バイバイ」


そう言うと私は、一目散に居酒屋を飛び出した。


二人がいるテーブル席を振り返ることなんて、もう出来そうになかった。