私たちの六年目

「秀哉は……、それでいいの……?」


梨華は、秀哉のことを特別好きなわけじゃない。


それを、知っていても。


それでも、梨華と結婚したいの……?


ゆっくりと秀哉に視線を移すと、秀哉は複雑そうな表情で私のことを見ていた。


相変わらず綺麗な瞳が、少しだけ潤んでいた。


「いいんだよ、俺は……。

少しずつ好きになってもらえれば、それでいい……」


秀哉にそう言われると、急にガクンと全身の力が抜けた。


そうか……。


やっぱり、そうなんだ。


秀哉の目には、いつだって梨華しか映っていない。


大学入学当時から好きで。


振られても、まだ好きで。


卒業してからも、ずっと思い続けて来たんだものね。


梨華の妊娠に関しては、ものすごくショックだったろうけど。


秀哉にとっては、それがチャンスになったんだ。


それを、秀哉が逃すはずがない。


しかも、いきなり結婚にまで進展するんだもの。


秀哉は、内心嬉しいに決まっている。


やっと、梨華がこっちを向いてくれたって……。


秀哉にそれでいいって言われたら、私はこれ以上もう何も言うことは出来ない……。