私たちの六年目

「それに私、給料もそれほど良くないし、貯金だってそんなにあるわけじゃない。

生まれて来た子は父親がいない上に、お金のことでも苦労させないといけないのよ。

そんなの、耐えられないよ……」


社会人二年目の私達。


確かにみんなまだ、そんなに給料があるわけじゃない。


梨華は無駄遣いをするような子じゃないけど、貯金額は私とさほど変わらないだろうと思う。


親の手が借りられないとなると、それはかなり大変なことだよね。


しかも、子供が生まれてしまったら、梨華はすぐには働きに出られないわけだし。


「そう……。梨華の気持ちはわかったよ」


郁未が、ため息混じりに言った。


「梨華は、もう赤ちゃんとさよならするって決めてるんだね……。

だから、今からお酒を浴びるほど飲んで、全部忘れるつもりなんだよね?

彼のことも、赤ちゃんのことも、まるでなかったことみたいに」


「郁未……」


「確かにさ、大変なのはわかるよ。

わかってるけど、あたしだったらそんな選択は絶対に出来ない。

どうにかして産む方法を考える。

そのためだったら、恥も外聞も捨てて人に頭を下げるわよ。

だけど、あんたは何もしないで簡単にあきらめてる。

しかも、その身体でお酒を飲もうだなんて、どうしてそんなことが出来るの?

あんたって、そんなことが出来る子だったっけ……?」