私たちの六年目

賑やかなはずの居酒屋が、一瞬無音になった気がした。


周りには、楽しそうに笑うお客さんが大勢いるのに。


私達のテーブルだけ、まるで時が止まっているみたいだった。


「梨華……、妊娠してるの……?」


最初に口を開いたのは、郁未だった。


「うん……」


梨華は、ゆっくりと頷いた。


「つまり、こういうことか?

梨華が妊娠を告げたら、相手の男が別れようって言った。

そういうことなのか……?」


守の言葉に、頭の中が真っ白になった。


まさか、梨華が妊娠しているだなんて。


「そんなのあんまりじゃない!」


郁未が、怒った口調で言った。


「確かに不倫は悪いことだよ。

でも、責任は両方にあるでしょう?

それを何? 梨華が妊娠したら、あっさり別れるの?

ひどいわよ。

絶対に許せない。

あたしがその男に文句言ってやるわ。

梨華、あんたのスマホを貸して!」


そう言って、梨華のバッグからスマホを探ろうとする郁未。


だけど、梨華は郁未の腕を掴んで「もういいの!」と叫んだ。


「もういいのよ……。

最初からわかってたことだもの。

いざとなったら、彼は自分の家庭を守るってこと。

彼からは、謝罪の言葉を沢山もらったし。

ちゃんと、必要なお金も渡されてる。

二人で話し合って決めたことだから、もういいの……」