『ねぇ、菜穂』


「ん?」


『今まで一度も聞いたことがなかったけど。

菜穂って、好きな人いないの?』


「え……?」


何? 突然……。


『いつも人の恋愛の相談ばかり乗ってるけど、菜穂の恋愛話は一度も聞いたことがなかったなって思って。

もしかして、もう誰かと付き合ってたりする?』


「ううん。誰とも付き合ってないよ」


『好きな人は?』


「そ、れは……」


いるよ。


その片想いも、もう6年目に突入している。


『言いにくいんだったら、無理には聞かない。

でも、いつか絶対に話してね。

私だって、菜穂の恋愛話を聞いてみたいんだから。

絶対応援する。菜穂には幸せになって欲しいから』


「うん……。ありがと……」


私が秀哉を好きだなんて。


これっぽっちも気づいていない梨華。


言えるわけないんだよ。


秀哉があんたのことを思い続ける限り。


そんな気軽に。


恋の話なんか、口に出来るわけないんだから……。