私たちの六年目

秀哉の言ったことは、間違いなく彼の本音のはずだけど。


どこか動揺しているように見えるのは、気のせいだろうか。


「本当にそうかな。

秀哉さん、さっき言ってましたよね。

菜穂さんに会いたいから会ってるって。

それって、自分に都合がいいからじゃないんですか?

菜穂さんって頼りになるし、包容力もあるから甘えられる。

片想いのつらさをなぐさめてもらったり、寂しさを埋めるにはピッタリなんじゃないんですか?」


「そんなわけないだろう?」


「じゃあ、どういうつもりで会ってるんですか?

菜穂さんに会いたいって言うけど。

もし秀哉さんに恋人が出来たら、どうしますか?

それでも菜穂さんと会うんですか?

どうせ、ほとんど会わなくなるんでしょう?

その程度の関係で、よくも僕を阻止しようと出来ますよね!」


「もうやめてよ!」


もう我慢出来ない。


これ以上、崎田君の好き勝手にはさせない。


「私と秀哉は親友なの!

秀哉に恋人が出来ようが、私に恋人が出来ようが。

一生変わらない大切な存在なんだから!」


会社の前なのに、私は思いっきり大きな声で叫んでいた。


その時、タイミング良くタクシーが到着。


「行こう、秀哉」


そう言うと、私は秀哉の腕を引いてタクシーへと乗り込んだ。


そんな私達を、崎田君は複雑そうにじっと見ていた。