「ごめんね、二人とも。

本当に、嫌な思いばかりさせてごめんね。

守や郁未にも、沢山迷惑をかけちゃった」


梨華の顔には、後悔の色が見えていた。


確かにここ数ヶ月、梨華のことで私達は本当に大変だった。


私もひどく悲しい思いをしたし、苦しくてつらかったけど。


でも結果的に、愛する人の心を手に入れられた。


出来ればこんなに遠回りはしたくなかったけど。


こういう流れでないと、秀哉の梨華に対する思いは手放せなかったのかもしれない。


だからきっと、全てが必要な出来事だったんだ……。


「こんな私だけど、これからも友達でいてくれる?」


申し訳なさそうに尋ねる梨華。


その顔はやけに子供っぽくて、なんだか可愛いと思ってしまう自分がいた。


「そんなの当然でしょう?

これからも親友だよ」


「秀哉は?」


梨華の問いに、秀哉が頷く。


「あぁ、もちろん。友達だ」


秀哉の言葉を聞いてホッとしたのか、嬉しそうに微笑む梨華。


「ありがとう」


そう言った後、また梨華の目から大粒の涙がこぼれた。


「もう後悔するのはやめよう。

前だけ向いて歩いて行こうよ」


梨華が教授や不倫相手を好きだったことも。


秀哉が5年間も梨華を好きだったことも。


二人が結婚することになって、傷ついた私も。


その時の自分は、それで精一杯で必死だったんだから。


そんな自分も全部受け入れて、前へ進んで行こう。


それがきっと、これからの自分の力になるはずだから……。