私たちの六年目

「私、これからどうすればいいのかな……」


そう言って梨華は、お腹の上にそっと手を置いた。


「もちろん産むつもりだけど、一人でどうやって育てたらいいんだろう。

仕事も辞めちゃったし、正直もう自分の生活費さえ危ういの。

赤ちゃんが産まれたら、ますますお金もかかるのに。

八方塞がりだよ……」


梨華が秀哉を手放せなかった理由は、やっぱりここが大きいんだよね。


経済的な理由。


そこがネックになっているんだ……。


「ねぇ、梨華。

梨華のご両親のところで、お世話になるわけにはいかないの……?」


私の問いに、梨華の目が倍ぐらいに大きくなった。


「む、無理だよ。

実家に帰るのは、絶対に無理!

それ以前に、不倫をしていたことだって言えないもの」


「でも、いつかはバレることでしょう?

お腹だって大きくなるし、赤ちゃんが産まれたら……」


「そうだけど、やっぱり無理よ……」


ご両親の話になると、梨華はやけに否定的になるよね。


ものすごく気を遣っているし。


どうしてなんだろう。


「ねぇ、ご両親の何がそんなに怖いの?」


「え……?」


私の問いかけに、首を傾げる梨華。


「正直に打ち明けたら、ご両親はなんて言うと思うの……?」