私たちの六年目

「そんな時に、秀哉が父親になってやるって言ってくれて。

どれだけ嬉しかったかわからない。

ずっと不安だった気持ちが、嘘みたいにスッと落ち着いて。

あぁ、これでもうこの苦しみから解放されるんだって、そう思ったの」


私が人生で一番悲しかったあの日。


梨華が秀哉の手を取った瞬間が、今でも目に焼き付いている。


梨華はあの時、つらい苦しみから解放されていたんだね……。


「とは言え、いきなり結婚や出産が決まったことで、なんだか落ち着かない毎日は続いていたの。

つわりも始まったし、相変わらず気持ちは不安定だった。

その時の私の不安の大半を占めていたのは、両親の存在。

秀哉と結婚することになったことを、一刻も早く両親に打ち明けないとまずいと思ったの。

お腹が大きくなってから話すより、出来るだけ早い方がいいって思って。

だから急いで両親に秀哉を紹介した。

幸い両親も喜んでくれて、私すごくホッとしたわ……」


その光景は、実際にこの目で見たから知っている。


終始なごやかな雰囲気で、ご両親は喜んでいる様子だった。


でもその背後で、秀哉がひどく傷ついていたことに。


梨華は、全然気づいていなかったんだね……。