私たちの六年目

相手の男性は、奥さんとの関係がすっかり冷めているって言っていたっけ。


だけど、二人のお子さんとは絶対に離れたくなかったんだよね……。


「本当は梨華、その彼のことがまだ好きなんでしょう?」


私の問いに、一瞬戸惑ったような表情をする梨華。


「……秀哉から聞いた?」


「ううん。

梨華は一途だから、きっとそうなんじゃないかなって思ったの……」


私の言葉に、梨華は一瞬だけ口角を上げて。


「さすが菜穂だね……」と呟いた。


「その人と結婚出来れば、一番良かったんだよね……」


その彼が奥さんと別れる決意をして、梨華の元へ来てくれていたら。


そうしたら梨華は今頃、幸せいっぱいだったかもしれない。


でもそうなると、その陰で泣く人が出て来る。


彼の二人のお子さんだ……。


不倫ってどうしても誰かが傷付いたり、悲しむことになってしまうんだね……。


「頭ではね、彼と結婚出来ないなら、子供は諦めるしかないって思ってたのよ。

お金ももらったし、早く病院へ行かないとって。

でも、気持ちが全然それに追いついてくれないの。

赤ちゃんを失うのはやっぱり嫌だし、病院に行くのもすごく怖いし。

でも、私一人じゃ育てられないこともわかってるから。

恐怖と不安で、気が狂いそうだった……」


「梨華……」