「秀哉にプロポーズされなければ、赤ちゃんとさよならするつもりだったって、あんたさっきそう言ったじゃない。

だとしたら、もともと赤ちゃんを殺そうとしていたのは梨華じゃないの。

私が残酷?

違うでしょう?

あんたが一番残酷なんじゃない!」


「菜穂……?」


「今の状況を後悔してるって?

だったら秀哉のせいにしていないで、さっさと中絶すればいいじゃないの。

でも、出来ないんでしょう?

そんな勇気ないんでしょう?

出来ないのは、なぜだか考えたことないの?

秀哉に言われたからじゃないよね?

あんたが……。

梨華自身が赤ちゃんを産みたいから。

だから、産む決意をした。

そうなんじゃないの? 違う……?」


気が付けば、いつの間にか梨華の目に涙がいっぱいに溜まっていて。


私は大きく息を吐くと、再び椅子に腰を下ろした。


「梨華が居酒屋で、私達4人に妊娠を打ち明けた時。

お酒を飲もうとしていた梨華に、郁未が聞いたよね?

あんたって簡単にそんなことが出来る子だったっけって。

そうしたら、梨華言ったじゃない。

そんなの割り切れるわけない。

彼のことは、いつか忘れることが出来ても。

このお腹の子とさよならしたことは、きっと一生忘れることは出来ないって。

それが、梨華の本当の気持ちなんじゃないの……?」