「菜穂……。

俺ね、菜穂と離れて以来。

ずっと菜穂に会いたくて会いたくてたまらなかったんだ。

菜穂が恋しくて、沢山話がしたくて。

なんでこんなに心が菜穂を求めるのか不思議だった。

最初はさ、親友を失った悲しみなんだと思ってたんだ。

すごく仲良しだった友達がいなくなったから、寂しいだけなんだって……」


確かに秀哉は、すごく悲しそうだった。


私が、もう二度と会わないって言った時。


だけど二人が結婚する以上、もう無理だと思ったから。


友達に戻るなんて、どうしたって出来なかった……。


「だけどさ、変なんだ。

5年以上も片想いをしていた梨華と、ようやく付き合うことになったのに全然嬉しくなくて。

むしろ、すごく苦しくて。

気が付けばいつも考えているのは、梨華のことじゃなくて菜穂のことで。

もしかして俺……、何かひどい勘違いをしているんじゃないかって思って。

そう思ったら、確かめたくなったんだ。

俺は、本当は誰を好きなのかって……」


その言葉に、トクンと心臓が音を立てた。


秀哉がゆっくりと動いて私との距離を取る。


すぐ目の前にある秀哉の顔。


秀哉は私のことを、まっすぐに見つめていた。