「菜穂……。菜穂……!」


何度も私の名前を呼んで、私を強く抱きしめる秀哉。


あまりに突然のことに、何がなんだかわからなくて。


私は秀哉のなされるがままになっていた。


「秀哉、くるし……っ」


そんなに強く抱きしめられたら、息がうまく出来ないのに。


だけどそれを伝えても、秀哉は私を離そうとはしない。


「ねぇ……」


秀哉がこんなに苦しそうなのって……。


その原因は、やっぱり……。


「梨華と何かあったの……?」


私の問いに、秀哉の身体がピクッと動いた。


何も答えない秀哉。


やっぱり何かあったんだ……。


しばらくすると、秀哉の腕が小刻みに震え始めた。


何があったかはわからないけど。


きっとひどく衝撃的なことだったんだ。


そう思った私は、それまでダラッと下げていた腕をゆっくりと秀哉の背中に回した。


そして、彼の背中をトントンと撫でた。


大丈夫だよと、言い聞かせるみたいに。


そうしたら秀哉は、まるでそれに応えるように。


私をさらに強く抱きしめた。


そのせいで、私の腰が弓のようにしなった。