まさかの言葉に、耳を疑った。


聞き間違いかもしれないと思って、思い返してみるけど。


梨華は確かに、その言葉を口にしていた。


「ちょ、ちょっと待って……」


どうしよう。


声がうわずる。


俺、動揺しているんだ……。


落ち着かないと。


ちゃんと説明しなきゃ。


「あのさ、梨華がどう思ってたか知らないけど。

俺……、まだ入社二年目なんだよ。

確かに学生の頃ずっとバイトをしてたし、多少貯金はあるけど。

給料は、梨華がもらっていた額とそう変わらないんだ。

だから、そんな高い家賃のマンションには住めないし、豪華な結婚式も出来ないよ……?」


緊張しながら言葉を発した。


梨華がどう思ったか不安で。


そんな俺の話を聞いた梨華が、一瞬表情を変えたのを俺は見逃さなかった。


今の顔、何……?


「そっか。ごめんねー。

なんか私、一人で浮かれちゃって」


そう言って、恥ずかしそうに笑う梨華。


その様子を見たら、ちょっとだけホッとした。


浮かれていた……か。


女の人って男と違って、結婚に色々と夢を見てしまうものかな。


そういうことなら、さっきの言葉も表情も気にしなくていいか。