「私みたいなのがタイプだとしたら、趣味が悪いわよ」


顔はいたって平均的だし、スタイルが特別いいわけでもない。


大酒飲みで、色気も全然ないのに。


「そんなことないですよ!」


突然大きな声を出す崎田君に、ドキッと心臓が跳ねた。


「菜穂さんは、人一倍仕事を頑張るし。

誰に対しても優しいし、後輩の面倒見はいいし。

みんなから頼りにされてて、すごく魅力的ですよ……」


崎田君があまりにも真剣な顔で言うから、頬がなんだか熱くなって来た。


「あの、ありがとね。こんな私のこと、そんなふうに言ってくれて……」


「そんなお礼なんていらないですから。

それより、僕のことをもっと知ってください。

だから、まずは二人で会ってゆっくり話しませんか?」


「あー……と、えっと……」


「ちょっ、そこはいいよって言ってくださいよ。

そんな小さなチャンスすら与えてくれないなんて。

僕ってそんなに魅力ないですか?」


「ううん、そんなことないよ。

崎田君は仕事の覚えも早いし、よく気がつくし、素直ないい子だと思ってるよ」


整った可愛い顔だし、雰囲気からして絶対モテそう。


こんな彼氏を持てたら、女の子はきっと幸せだと思う。


「だったら、二人で飲みに行くくらい許してくださいよ」


「うーん……」


飲みねぇ……。


どうなんだろう。


飲みに行ったって、私……。


「ねぇ、菜穂さん」


「ん?」


「もしかして……。


誰か好きな人がいるんですか……?」