「秀哉、一つだけお願いがある」


私にそう言われて、コテンと首を傾げる秀哉。


「私を、二人の結婚式には呼ばないで」


「え……?」


秀哉と梨華は美男美女でお似合いで、素敵な新郎新婦に違いないけど。


そんな二人の幸せそうな姿を、まともに見ていられるはずがない。


「それから、新居にも絶対に呼ばないで」


梨華の名字が吉見から日生になって。


二人が暮らす部屋なんかに入ったら、私は気が狂ってしまうかもしれないから。


「ま、待って、菜穂……。

もしかして菜穂は……。

もう俺とは会わないつもり……?」


なぜか悲しそうな秀哉。


でもね。


もうその顔には騙されない。


私がどんなに期待したって。


秀哉が一番大切なのは、梨華なんだから。


「そうだね。

もう、会うことはないかな……」


いつか、秀哉を忘れられる日が来るかもしれない。


でも、5年以上も私の心は秀哉でいっぱいだったから。


それを塗り替えるには、同じだけの年月が必要だと思う。


秀哉に会えば、その時間はもっとかかってしまうから。


ここで終わりにする。


もう同じ過ちは、二度と犯さないように……。