ユキは結局、夕方過ぎまでぐっすり寝ていた。そろそろ退散する頃にやっと起き出してきて、

「……あれ、もうよる?」

寝ぼけまなこでボソボソ言う。寝癖でぴょんぴょん跳ねている前髪。なんて可愛い生き物なのだろう。抱きしめたい。

……いやいやいや、それよりも早く話をしないと。明日にはここに啓吾が来るから、タイムリミットは今日中だ。

でも……。

まだ迷っていたら、ユキの方からわたしに声をかけてきた。

「沙奈、ちょっと話したい」

「あ、うん」

食堂にはまだ人がたくさんいるから、わたし達はまた昨日の非常口前に移動した。

外はもうすっかり暗くて、おまけに肌寒い。頼りない外灯に照らされた木の影が、冷たい風で小さく揺れている。