「だって、なに」

そもそも、こういうガンガン攻めるみたいなことは得意じゃない。本当はギリギリ。

心臓はめちゃくちゃうるさいし、「俺のこと好きなの?」とか恥ずかしすぎて死にたい。

でも、今さらあと戻りできない。戻れなくなったのは、沙奈のせいだから。

だから、もう捕まって?

「……ユキは」

沙奈が、広場の喧騒にかき消されそうなほど小さな声でポツリと言った。

「なに?」

「ユキは……わたしのこと好きなの?」

この期に及んで何故そんなことを訊くのだろう。そんなことを訊いたら、余計に逃げ道がなくなるのに。

それとも、言葉にして追い詰めてほしいの?

……ならそうする。

「好きだよ」

俺が答えた瞬間、沙奈が息を飲んだ。

答えなんてわかってたくせに。