教室に入ると、さっきまでの凍った空気など一瞬で消えるほどみんなが騒ぎ出す。
その瞬間を見て、私はホッとした。


「廊下ですら、あの空気だったのになんか、みんな緩んだね。」

「やっぱり、教室が一番落ち着くからね。ライバル意識持たなくていいから。」


そう言った仁奈ちゃんは、席につく。
私もその前の席に座り、机に突っ伏した。


窓側の列の後ろから2番目のこの席は、私にとっての特等席のようなものだ。


すると、隣の席に男子が座った。
そして、その男子の周りには人が群がる。


「橘、帰りカラオケ行こうぜ!」

「ちょっと!橘くんは、私達と遊びに行く約束してあるんだよ。」

「いや、俺、今日はバイト入れたから無理なんだ。ごめんね。」


よくわからないが、その橘君はクラスの人気者…とゆうか、同じ中学の子にモテモテらしい。


「仁奈ちゃん。橘くんって、何者なの。」

「あー、この学園長の息子。」

「へ〜。漫画みたい。」


私達がそんな会話をしていると、橘くんが話に加わる。
気づくと周りに居た子たちは席に戻っていた。


「俺の話?」

「そうだけど、もう終わったよ。」

「橘くんが学園長の息子で、それが漫画みたいだねって奈々ちゃんが言ったの。」