それもそのはず、ここは廊下だ。
それに、その言葉を発したのは白石祐陽で、
その言葉をかけられたのは、3組の私だからだ。


私は無視しようと、自分の名前が載ることのなかった掲示板の紙を見つめた。
仁奈も気まずそうに固まっている。


「お前、無視するってゆうのか…いい度胸してるじゃねえか。」


怒りマークが振り向かなくても、顔についてるのは想像できた。
でも、なんでこんな危険な行為してるんだろ?


この間なんて、自分から図書室以外では話しかけるなよって強く言ってきたくせに。


あ、わかった。よっぽど私が入ってなかったのが嬉しかったんだな!


「そうか。無視を続けるっていうなら、こっちにも手段があるからな。」


そう呟いてどこかへ去っていく白石祐陽。
私と仁奈は急いで教室に退散した。


「お、お二人さん。慌ててどうした?それに、廊下もなんか騒がしいな。」

「橘、今すぐ隠れることができる場所教えて!!」

「なんで?」

「橘くん、奈々を匿って!」


そう言って、仁奈は橘の後ろに私を隠す。
私もつい橘のカッターシャツを掴んで、できる限り小さくなる。


次の瞬間、教室の前のドアが開けられ、特進科の、そして学年一位の白石祐陽が現れたのだった。