後はこの階段を登れば、音楽室に着く。


さっきから鳴り響いているのはたぶん、ショパンの『 別れの曲 』



ショパン エチュード Op.10-3 ホ長調 『 別れの曲 』



どうしてまたそんな悲しい曲を、と思うけれど、私は彼がその曲を、その曲だけを弾く理由を知っているから。


ゆっくりと階段を登りながら、もう今までに何度も考えた問いかけのことを考えた。



ねぇ、今年同じクラスになってどう思った?

高校、一緒になっちゃってどう思った?


ちょっとでも、揺らいでくれた?
後悔してくれた?


ねぇ、そーすけ。私はね、死ぬほど後悔したんだよ。

同じクラスになんか、なりたくなかったよ。
高校だって、別々がよかったよ。



だって、だってね、



そう思った時、私の視界の端に『 第1音楽室 』の文字を捉えた。

ああ、もう音楽室の前まで来てたんだ。



でもね、あいにく私はこの扉を開けてわざわざ拒絶されに行く度胸は持ち合わせてないんだ。


だから、音楽室の扉の横にしゃがんで、ピアノの音を聞くの。


さっき音楽室の小窓から見えた。


やっぱり思っていた通りピアノを弾いていたのはそーすけだった。