「きめぇんだよテメェ!死ね!!!」ドゴッ

誰かに腹を蹴られた。

「う…あ…」

思わず呻き声を上げる。

痛い。ものすごく。腹がズキズキする。

それを見て、私を蹴った本人ーーー久遠 美咲姫(くおん みさき)とその取り巻きたちはキャハキャハ笑っている。

当然だ。彼女たちは楽しんでいるのだから。

そして、私は当然抵抗などしない。

なぜならこれが私、榎本 深和(えのもと みわ)の日常だからだ。

始まりはほんの些細なこと。

高校1年の秋。

美咲姫の好きだった人が、私に告白をしてきた。

ただ、それだけ。

私は美咲姫がその人を好きだということを知っていた。

美咲姫とは親友だったから。

だから、当然その告白は断ったし、美咲姫との関係も変わることは無いと思っていた。

だけど、そう思っていたのは私だけだった。

次の日から私を取り巻く環境は一変した。

朝、教室に行くと黒板に大きな文字で« 榎本 深和は裏切り者!! »と書かれていた。

初めは何が何だか分からなかった。

でも、そこへ美咲姫が現れて全てが分かった。

理解してしまった。

これは美咲姫が私に向けたメッセージだと。

そして、私の新たな生活の始まりだと。

ーーーそれから今日までずっと私はいじめを受けている。

初めは抵抗もしたけれど、それでも辞めてくれないと分かってしまってからは抵抗はしない。

この時間が早く終わってくれと願うだけ。

クラスのみんなは誰も助けてくれない。

だって、私をいじめている美咲姫はクラスのリーダーだから。

私なんかを助けたら、自分がターゲットにされてしまうだろう。

私がそっちの立場でもきっと見て見ぬふりをする。

だから、耐えて耐えてただ耐えて。

時が過ぎるのをただ待っている。

彼女たちの気が済むまで終わらないこの悪夢のような時間をーーー。